vol.10 下舘進さんの山形村短角牛で作った、高谷華子さんの「ステーク・アッシェ(ハンバーグ)」

岩手県久慈市で「夏山冬里方式」という伝統的な飼育と、国産飼料にこだわる下舘さんが育てた「山形村短角牛」で、“食オタク”を自負する高谷華子さんが、お肉のうま味をストレートに生かしたハンバーグを完成させました。

教えてください

高谷華子さん(神奈川県)
高谷華子さん

和食、フレンチ、イタリアンなどのスタイルを取入れた家庭料理の教室を主宰。Webや雑誌へのレシピ提供、広告写真のフードコーディネイトなどでも活動中。食材だけでなく、食器や調理器具についてもこだわりを持つ“食オタク”。理想のものを作るべく、日々努力をされている生産者さんのために何かできないかと考える日々。海が見える高台で自家製野菜を使った気まぐれな日替わり1品だけの食堂を営むのが夢。日本ソムリエ協会/ワイン・エキスパート、ル・コルドン・ブルー/グラン・ディプロム

お教えします!

下舘 進さん(岩手県)
下舘 進さん

畜産農家の長男に生まれ、後継者として就農。1男3女の父。岩手県久慈市山形町(旧山形村)の肥育農家で作る「山形村短角牛肥育部会」会長。部会員数14名。約30年前より市民NGO企業「大地を守る会」との取引を開始、以後毎年産地交流ツアーを欠かさず実施。村を訪れた消費者はのべ1,000人を超える。訪れた消費者には山形村短角牛はもちろん、郷土料理「まめぶ」など地元ならではのものでもてなすことがモットー。趣味は地元山形村で行われる東北唯一の闘牛。闘牛5頭の所有者でもある。

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「山形村短角牛」のこと教えてください

  • From:料理家
     高谷華子
  • To:生産者
     下舘 進さま

いつも、美味しい山形村短角牛をありがとうございます。

私は“牛肉が大好き”です。そして、おいしい牛肉といえば、ほどよくサシの入ったものと、ずっと思っていたのですが、何年か前、あるレストランですすめられた「短角牛」を食べた時、その考えは変わりました。


その時、運ばれてきたお肉は、しっかりとした繊維がはっきりと見て取れ、“肉汁滴る”でもありません。お皿の中を見て「えっ?」と思いました。
ですが、その、ちょっと残念そうな(ごめんなさい。当時はそう思ったのです)お肉をひと口ほおばって味に驚きました。

極上の牛肉を表現する、最高のコメントは「とろけてなくなる」「お箸で切れる」が定番ですが、短角牛はまったくその反対。ほどよく歯応えがあり、よく噛んでいると、うま味がじわっとしみ出して美味しさがどんどん出て来ます。

山形村短角牛はどのように育てられているのでしょうか?
あの、しっかりとした肉質、うま味いっぱいの赤身はどうしてできるのでしょう?
  
お忙しい時期とは存じますが、大好きな短角牛のこと、いろいろと教えて頂ければと思います。どうぞよろしくお願い致します。

「山形村短角牛」のこと、お教えします

  • From:生産者
     下舘 進
  • To:料理家
     高谷華子さま

いつも山形村短角牛を食べていただき、ありがとうございます。

「山形村短角牛」は、もともと東北北部で広く飼われていた南部牛をルーツとする日本短角種を、「夏山冬里方式」と呼ばれる伝統的な飼い方を継承して育てています。

冬から春先に生まれた仔牛は、春になると母親とともに山に放たれ、秋に里に戻すまでの
間、自然の中で自由に過ごしながら、牧草と母乳だけで育ちます。この群の中に雄牛も放すことで、自然交配が行われ、また冬から春にかけて仔牛が生まれるというサイクルを毎年繰り返します。半年近くも野山を駆け巡るため、牛舎で暮らす牛に比べてしっかりとした赤身が形成される理由はここにあると思います。また、何よりも、自然の中で親子共々ストレスなく育つことも、きっと味に良い影響を与えていると思います。

秋に里に帰ってきてからは、国産の飼料にこだわり育てています。2005年からは全頭を国産飼料100%に切り替え、「山形村短角牛」と商標登録をしています。国産飼料にこだわるということは、地域で調達できる牧草や稲わらなど、粗飼料の割合が増えることにもつながります。高カロリーの餌を多めに給餌して霜を入れるというわけにもいきませんので、ここもまた赤身のうまさが際立つ理由かと思います。

日本で「最高の牛肉」といえば、高谷さんのおっしゃるとおり「霜降肉」というイメージを持つ人が圧倒的ですが、最近は、低カロリー、高タンパクで、肉のうま味のもととなるアミノ酸を多く含む短角牛は、見直されつつあります。日本では赤身のうまさを追求する飼育が少なく、なかなか出会う機会が少ないせいか、やはり皆さん「こんな牛肉があったとは!」と驚かれます。

そうは言っても、短角牛は、牛肉市場に流通する量の1%にも満たない稀少な存在…。これからも、日本短角種という種を守り、夏山冬里方式という伝統的な飼育方法を守り、「日本の赤身の牛肉といえば、山形村短角牛」と言われるように頑張っていきたいと思います。是非、応援していただければと思います。

「ステーク・アッシェ(ハンバーグ)」ができました!

  • From:料理家
     高谷華子
  • To:生産者
     下舘 進さま

早々にお返事をありがとうございました。

なるほど。
牛は狭い牛舎で、一日中飼料を食べているものかと思っていましたが、短角牛は山を歩いて、草を食べて。だから、うま味が詰まった赤身ができるのですね。
毎日適度に身体を動かし、腹八分目のバランスよい食事をし、ストレスをためないこと。これは人間に言われることですが、牛もきっと同じですね。短角牛の味わい、“健やか”という表現がぴったりです。

さて、先日のお肉、ハンバーグにしてみました。
つなぎを加えず、お肉だけをまとめ、表面をこんがりと焼いた、まさにハンバーグ“ステーキ”です。ソースもありません。赤身のうま味がしっかりと味わえるよう、本来はつなぎとして入る、甘く炒めた玉ねぎと卵(卵黄)は後から添えました。
ソースの美味しさに頼らないハンバーグは、お肉本来の美味しさがしっかりとしているからこそ作れるものと思います。

お肉のうま味をストレートに出せ、そして、誰もが好きなもので何か…と考えたところ、ハンバーグに行きつきました。

最後になりましたが、私たちが買い支えなければ、短角牛の伝統が絶えてしまうかもしれないと、以前記事で読んだことがあります。どんどん機会を作って、買い求め、うちでいただくのはもちろん、料理教室でも紹介していきたいと思います。

お身体に気をつけて、これからも、おいしい山形村短角牛をお願い致します。

※写真協力:大地を守る会

  • ※この記事は、2010年05月の取材に基づいて構成したものです。

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