新潟県村上市で、新しい農業のスタイルを模索しながら、大好きなお米作りに日々まい進している板垣さん。お米ソムリエの資格を持つ料理研究家秋元薫さんが、板垣さんのお米と「沖取りの雄鮭」で、ふっくら素敵な炊き込みご飯を完成させました。
教えてください
- 秋元 薫さん(東京都)
料理研究家、米食味鑑定士、お米ソムリエ、食生活アドバイザー、フードアナリスト。雑誌等にレシピ提供を行う他、Web上で銀座周辺のレストランを紹介するレポートを連載。和食からインド料理まで幅広いジャンルの料理を、基本を踏まえながら家庭で美味しく作れるようアレンジをすることを最も得意とする。「食べ歩き」「おうちご飯」「お取り寄せ」「食材探し」その全てを愛し、レストラン、キッチン、市場や畑を飛び回る毎日。
お教えします!
- 板垣嘉将さん(新潟県)
昭和53年生まれ。農家としては13代目、「新耕農産」2代目の農家。最初は家業を継ぐことに反発していたが、稲刈りで初めて自分が関わったお米を食べて農業に開眼。春から秋まではお米を育て、冬は昔ながらの製法にこだわった塩引き鮭の生産という、古来から村上に暮らす人々のライフサイクルを守りながら、大好きな地元で新しい農業のスタイルを模索しつつ、超土着的な田舎ライフを楽しんでいる。今年10年目。10回目の米作り、10作目の塩引き鮭に取り組んでいる。
- 新耕農産について詳しく見る
- From:料理家
- 秋元 薫
- To:生産者
- 新耕農産 板垣嘉将さま
いつもお世話になっております、料理家の秋元です。鮭とお米、大変美味しくいただきました。
鮭やお米は産地や生産者によって本当に味が違いますね。築地やお取り寄せの物もずいぶんと食べてきましたが、板垣さんの鮭を焼いている時の香りの良いこと! 発酵食品独特の複雑な香りとうま味、そしてパリッパリの皮は、私の中でも『記憶に残る味』です。また、お米も格別の美味しさが‥。
「お米と鮭」の美味しさのワケ、是非教えてください。
◆お米について
・コシヒカリの中でも、板垣さんのお米に「重厚なうま味」があるのはなぜですか?◆鮭について
・原料の鮭は、村上ではみなさん「沖取りの雄鮭」を使っているのですか?
・乾燥・熟成期間は生産者によって違いがありますが、どのようにして期間を決めているのですか?
・しっかりしているけれど強すぎない、この塩加減のこだわりとコツを教えてください。
・尾を上にしてつるすのはなぜですか?
・シンプルに焼くのが一番美味しいと思いますが、地元ではどんな風に食べられているのですか?
- From:生産者
- 新耕農産 板垣嘉将
- To:料理家
- 秋元 薫さま
こんにちは。いつもお世話になってます!
お米と鮭のこと、お答えしますね。
まず、お米については、やはり気候と土だと思います。重粘土質の田んぼが多いので、収穫量は少ないのですがうま味の強いお米ができます。あとは畜産農家が昔から多かったので、堆肥を使った土づくりがあったからだと思います。鮭については、村上全部が「沖取りの雄鮭」を使っているわけではなく、川にのぼった鮭を使っている方もいます。また、メス(採卵後)は沖取りのオスと比べると価格が安いのですが、卵に栄養を取られているので、身を食べるのなら絶対オスがうまいんです。
私は、塩引き鮭は熟成食品だと思っていて、乾燥具合以上に、熟成した香りで出荷時期を決めています。特に私の鮭は自然乾燥なので、日数ではなく、仕上がりを見ながら出荷しています。また、塩引き鮭は鮭と塩だけで作る単純な食品です。しかし、シンプルだからこそ素材と工程にはこだわります。小さな要素が大きく味に影響しますから…。厳選した鮭、厳選した塩、そして何より手作業で丁寧に仕上げるのが最大のコツだと思います。
さて、村上の塩引き鮭は村上城主への献上品だったので、頭が高い! と言われる説や、縁起を担いで「首つり」を避けているという説も…。腹の二段裂きが切腹を嫌っての加工法なので、やはり首つりを避けて尾を上にしたという方が有力です。
最後に地元での食べ方。竜田揚げ風にしていたりしますが、基本的に焼いて食べています。塩引き鮭の中骨などは大根と一緒に煮ると、鮭のうま味が出て最高にうまいんですよ!
- From:料理家
- 秋元 薫
- To:生産者
- 新耕農産 板垣嘉将さま
お忙しい中、お返事をありがとうございました。
やはり、香りや味など美味しいにはワケがあるのだと改めて感じました。よく同じ産地や季節で収穫された食材は「出会いの味」といって相性がよいとされますが、この香ばしい皮、うま味のある鮭の身、濃厚な味わいの板垣さんのお米は、まさにそれですね。
私はこの熟成された鮭と同じ発酵食品である「味噌」と「みりん」でほんのりと甘みをつけ、焼いた鮭と一緒に炊き込んでみました。仕上げにはパリッと焼いた鮭の皮と三つ葉を刻んであしらえば、村上の鮭ならではの香り豊かな炊き込みごはんです。一杯目はそのまま、二杯目はお茶漬け、残ったらおにぎりに…。
13代引き継がれた伝統の食材と板垣さんに感謝いたします。
- ※この記事は、2010年04月の取材に基づいて構成したものです。
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