プロ料理家365名によるプロのレシピ4812

第47回 300年の伝統を持つ知られざるエクルズ・ケーキ

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今回ご紹介するエクルズ・ケーキは
新年にふさわしい聖なるケーキのひとつ。
18世紀から発売されていた記録もある
300年近い伝統を持つこのケーキは、
昔は教会で販売され、表面にある三本の切り込みは
キリスト教の「三位一体」を表しているそうです。

300年ほとんどレシピが変わっていないというだけあり、
カランツ(小粒の種無しレーズン)にブラウンシュガー、
オールスパイス、ナツメグを加えたフィリングをパイ生地で包み、
表面にグラニュー糖をふりかけて焼いたもので、
ケーキというよりはレーズン・パイに近い
昔ながらの素朴なお菓子です。
現在はスーパーマーケットで売られているほど、
イギリス人にはなじみの深いケーキです。

「エクルズ」の名はイギリス北西部ランカシャー地方の
エクルズという町に由来しています。
ランカシャーはセミ・ハードタイプのランカシャーチーズが有名なので、
この地方ではチーズと一緒に食べることが多いそうです。

特においしいと評判なのがモダン・ブリティッシュのレストラン
「セント・ジョン」のもの。
「ブレッド&ワイン」という2号店やバラ・マーケットの
チーズ屋さん「ニールズ・ヤード・デイリー」でも販売され、
最近ではバーモンジー・ストリートのマーケットにも出店するほどの人気ぶり。

軽くハラハラと幾重にも重なったペイストリー、
なかにはスパイスの効いたカランツがぎっしりと詰まっていて、
この焼きたてのケーキの素朴で香ばしいおいしさは
300年もの間、人々に愛されてきた秘密を物語っています。

小松喜美さん写真

フード・ジャーナリスト 小松喜美

イギリスをメインにヨーロッパの魅力を食と文化の視点から紹介するフード・ジャーナリスト。料理・菓子は「ル・コルドン・ブルー」やパリの「リッツ・エスコフィエ」で学んだ経験をもとに、「食べることは生きること」を信条として、日々おいしいものを探究する日々をブログや雑誌媒体のメディアに掲載しています。

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