プロ料理家365名によるプロのレシピ4812

第38回 旅を楽しむ、パリの優雅なティープレイス

前回のルーヴル美術館に続いて、
パリならではのお気に入りのティープレイスといえば、
ジャックマール・アンドレ美術館です。

パリ8区にあるこの瀟洒な美術館は
19世紀ナポレオンⅢが統治した華やかな第二帝政時代、
1869年に建設され、当時の貴族の邸宅であったこの美術館の名称は、
銀行家のエドュアール・アンドレと、
彼の妻であり、肖像画家であったネリー・ジャックマールから
名づけられています。

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イタリア・ルネッサンス、18世紀フランス、フランドル派などの
絵画作品を中心に、美術工芸品から家具などの調度品に至るまで、
二人が収集した膨大なコレクションが展示されています。
ボッティッチェリ、レンブラント、ファン・ダイク、ブーシエなど、
二人の収集の予算がルーヴル美術館を超えることもあったというのも
納得できるほどの名画の数々が展示されています。

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ここでのお楽しみがミュージアム・カフェでのティータイム。
かつて夫妻がダイニングルームとして使用していた場所が、
現在はカフェとなっているのですが、
天井にはティエボロのフレスコ画が優雅に踊る空間は、
時間の流れもゆったりと過ぎていくようです。

薄曇りのこの日、私がいただいたのは、ミントティーとアプリコットタルト。
ロンドンでは紅茶、パリではコーヒーかハーブティーを飲むことが多いのですが、
一般的にその逆は余りおいしくない気がします。
その土地の風土や空気に合った食べ物、飲み物があり、
なぜか私の中ではパリはコーヒー、またはハーブティーがおいしく感じられるのです。
ハーブティーは、イギリスのシンプルなフレーバーのものに比べ、
フランスのハーブティーは凝ったブレンドのものが多いのも特徴でしょうか。

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アプリコットの爽やかな甘酸っぱさ、
アプリコットがのっているタルト部分のちょっとしっとりした部分、
バターと粉の香りを感じる素っ気ないほど焼きっぱなしのタルトは、
パティスリーのお菓子というよりは、エクレアやタルト・オ・シトロンと同じ
素朴なブーランジェリーのお菓子に近いもの。
パティスリーのお洒落なアプリコットタルトにはない、
シンプルなおいしさがあります。

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このカフェに座ってお茶をいただいていると、
美術館としては小規模ながら細部に至るまで、
この館を作り上げた情熱と、
一貫した二人の美意識が感じられます。

ヨーロッパの歴史と文化が生んだ場所を、
一杯のお茶で共有するこの時間こそ、
旅行でなければ味わえない醍醐味がある、
お金で買えない価値があるように思うのです。

STORE INFORMATION

ジャックマール・アンドレ美術館 
Musée Jacquemart-André
158 boulevard Haussemann
Tel +33 01 45 62 11 59
www.musee-jacquemart-andre.com/

小松喜美さん写真

フード・ジャーナリスト 小松喜美

イギリスをメインにヨーロッパの魅力を食と文化の視点から紹介するフード・ジャーナリスト。料理・菓子は「ル・コルドン・ブルー」やパリの「リッツ・エスコフィエ」で学んだ経験をもとに、「食べることは生きること」を信条として、日々おいしいものを探究する日々をブログや雑誌媒体のメディアに掲載しています。

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