【第3回】 ”バイオダイナミック農法”の美味しい小麦粉@イギリス
9年前に、2年間ほどロンドンに在住していた当時、
「せっかくキッチンにオーブンがあるのだから・・・」とパンを焼きはじめました。
するとやはり美味しい小麦粉が買いたい!という思いが募ります。
(私は全粒粉のどっしりしたパンが好きです)
本屋さんで購入したパンの本の巻末にリストアップされていた美味しい小麦粉を扱うという店に1件1件問い合わせをし、パンフレットを送ってもらったり、少量購入してみたりという作業を続け、ある日、1件の小さな製粉所の小麦粉に出会いました。
豊かな香り、しっとりした肌ざわり、噛めば噛むほど甘味を増す小麦粉は今まで味わったことのないものでした。この小麦粉で作ったパンはどっしりとした素朴な味わい、そして、スコーンは何とも言えない香りと甘みを放ちます。
"The Watermill" (「水車小屋」)
湖水地方にあるカンブリア州。
ピーターラビットの作者であるビアトリクス・ポターやワーズワースの愛したイギリス再北西のとてもきれいな場所です。
その地にある水車小屋を使った製粉所 ”The Watermill”は、ロンドンから電車を乗り継いで約4時間。
今回、念願かなって初めてこの製粉所を訪れることができました。
小さなティールームとショップが併設され、地元の人たちがパンを買いに来たり、お菓子とお茶を楽しみに来たり。のんびりした空気が漂います。
"Biodynamic"(バイオダイナミック)農法
この製粉所では、水力を使い、大きな石臼を回し、時間をかけて小麦粉やライ麦などを挽きます。
熱が加わらないので味も、風味も格段に優れています。
しかし、生産できる量が限られるために、現在実際に水車の動力で石臼を動かし、
粉を引いているのは本当に珍しいそうです。
そして、もうひとつ、ここの製粉所の粉がおいしい理由は、"Biodynamic"農法で作られた小麦粉を扱っているということです。
オーストリア・ドイツで活躍したルドルフ・シュタイナーによって提唱されたこの農法は、
人間・動物・植物・鉱物・宇宙は切り離された存在ではなく、
それらが一体となって存在しているということを礎とし、
化学合成された肥料などを用いずに生命(Bio)の力動学(Dynamics)の調和による
農産物の生産を目指す方法です。
欧米では現在、オーガニックの先をゆく農法として、小麦粉のみでなく、
野菜、果物、ワインの生産現場などでとりいれられ、製品も次々と発売されています。
日本でもこの農法を取り入れて農作物を作っている方達がいらして、製品を購入することもできます。
バイオダイナミック農法の広がり=自然との調和
バイオダイナミック農法で作られた小麦、
水車小屋で大きな石臼でゆっくりと挽かれた小麦粉、
地元の人たちが1つ1つ手作りするパンやお菓子、
なだらかな丘の続く豊かな田園風景。
このティーハウスで過ごしたゆっくりとした時間。
自然との調和に基づくこの農法が多くの人に受け入れられ、世界中に広がっているということ。
そんなことを思いめぐらしながら、「自分たち人間が自然の営みの一部であること」、そして、「自然のリズムに逆らわずに今を大切に生きるということ・・・」
そんな事を思った水車小屋の訪問でした。
:::::::::::::::::::::”まんぷく紀行―まんぷくのおすそ分け♪”:::::::::::::::::::::::::
"The Watermill"で楽しんだたくさんのパンやお菓子。ほんの一部をご紹介♪
「このパンは小麦粉何グラム?」と聞くと「計ったことないから分からないわ~!」との答え。
やはり目分量でパンが作れるほどに身についているんですね。
出来たてのビクトリアスポンジ。2cm厚はあろうかというバタークリームに自家製のストロベリージャム。誘惑には勝てません・・・
スコーンは重曹の味がする、素朴な味。クロテッドクリームをいっぱいつけていただきます。