早いもので2016年も間近。今年もさまざまな食のトレンドが旋風を巻き起こしました。では、2016年はどんな風が吹くのか? 今年も、食のプロが現場で感じた新しいムーブメントをひと足早くご紹介します。
(まとめ・文:ライター北條芽以)
デザイン性の高いアウトドアグッズ。
非日常を仲間と楽しむ食事シーン
ファミリー層から学生まで、現在、流行の兆しを強く感じるのが「外ごはん」。デザイン性の高いアウトドアブランド「スノーピーク」をはじめ、キャンプやバーベキュー周りのグッズが売れ行きを伸ばしている。キーワードは「少し上質」と「コミュニケーション」。おしゃれで高性能なアウトドアグッズを買い、家族や友人と屋外でのキャンプやみんなで作った食事を楽しむというわけ。河原で東北名物の「芋煮会」をする人が全国的に増えているというのもこのトレンドの一部といえるだろう。
アウトドア用品を使って作る食事を自宅のテラスや、ときには室内で食べるという、カジュアルアウトドアを取り入れる人も多い。
また、年収1000万円以上のクラスを中心に、ラグジュアリーキャンプ「グランピング」を利用したレジャーが新しく確立されており、施設も急増中。1日1組など限定的な施設が多いこともあり、予約が埋まっているケースもあるようだ。
さらに、「外で食べる食事」として、オーストラリア生まれの「ロングテーブルディナー」が日本上陸を果たしたのは2015年のトピックのひとつ。2016年の春夏はイベントとして注目を集めそう。
小さな非日常を味わえる「外ごはん」。これからどのようなサービスやグッズが誕生するか注目したい。
「既に基本的なアウトドアグッズを持っている人たちが、一歩先ののグッズを買い揃える段階のようです。バウルー(ホットサンドメーカー)やかわいらしいピクニックセットなどに注目」(星野)
「出掛けなくても家の中でスキレットなどを使ったアウトドア料理を楽しむというのは今まであまりなかった食事の形態。オーブンの焼きっぱなし料理やインスタグラム発の『ぎゅうぎゅう焼き』もその一例かもしれません」(森崎)
おうちでの食を楽しむことが幸せ。
注目は“サードウェーブ男子”
インスタグラム等のSNSで生活の内側を人目に晒す機会が増え、その背景に映り込むインテリアや雑貨の売上にまで影響を及ぼしてという。
SNSにアップするかしないかは別として、手間を掛けておせちを手作りしたり、季節ごとの保存食を仕込んだりして、「ていねいな暮らし」を楽しみたい、という層は確実に厚くなっている。流行のファッションよりも、一生使える調理道具や器、上質な調味料などにお金を使い、「家での仕事」に幸せを見出す。
このトレンドは女性をターゲットとしてこれまでもじわじわと続いてきていたが、2016年に注目したいのが20代後半から30代の男性の意識が生活やキッチンに向いていること。「朝はスムージー」「菌活」など、女性の間で流行したヘルシーフードや健康法を取り入れる男子が増えているというのだ。
この男性たちを、コーヒーを一杯ずつていねいに淹れる、または好きな店のコーヒーをわざわざ飲みに行くなどの行動から「サードウェーブ男子」とも呼ぶ。少しずつ経済的に余裕を持ちはじめたサードウェーブ男子は、2016年、注視したい消費者なのかも。
「レシピ本でも、料理からライフスタイルへの広がりを感じます。『ミニマリスト』『持たない暮らし』もキーワード」(星野)
「地方で活躍する若い男性たちがとてもおしゃれに、おいしいものを発信しているケースが多く、魅力的な商品が多いですね」(森崎)
消費者を取り巻く環境が激変する中、
食が大きく変わり始める!?
目に見えて街に外国人観光客が増え、インバウンド需要を実感している日本。食も然り、レストランにも多くの外国人客が増え、対応に追われているようだ。
日本の食を紹介するのも大切だが、現代の日本にはさまざまな思想・食文化を持つ人々がやってくる。例えばハラール、ベジタリアン、グルテンフリーなど、それぞれの食への考え方に対応していくのは、国際化が進む日本にとって大切なことになってきそうだ。しかし、「材料に◯◯を入れず、レシピ通りに作ればいい」というものではなく、例えばハラール料理なら、同じ店内に豚肉が存在することも許されないなど非常に細かな決まりごとがある。お互いに食文化を尊重していくためにもきちんとした情報と、作り手・食べ手それぞれの勉強が必要な時代なのだ。
逆に、地方でおいしいものをていねいに作っている生産者やメーカーも、どんな国の文化や嗜好とフィットするかわからない状況。個性的なスマッシュヒットが生まれる可能性は十分にある。
また、2016年は消費税増税前の1年であり、2020年の東京オリンピックに向けての開発、TPPなど、消費者にとって変化の波が押し寄せそうな年。食の世界もこういった変化に影響を受けることは免れないだろう。
「特に必要とされているのがハラールやベジタリアン、グルテンフリーなどの食生活を送る人への対応。リサーチや開発を進めてきた企業が結果を出し始める年になるのではないでしょうか」(森崎)
「高級レストランに予約を入れまくる外国人観光客が増えていると聞きます。レストランは対応していかなければなりませんね。『爆買い』の次は『爆食』かも!?」
- 森崎 繭香 さん
- 大手クッキングスクール講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。
企業向けレシピ開発や雑誌へのレシピ提供、NHK料理番組出演、ラジオ出演などの他、料理イベントの監修や飲食店のメニュー提案など、フードコンサルタントとしても活動中。
- 星野奈々子 さん
- フードコーディネーター
ル・コルドン・ブルー代官山校 料理ディプロマ取得。祐成陽子クッキングアートセミナー卒業。 現在はフードコーディネーターとしてレシピ開発やフードスタイリングを中心に活動中。
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