プロ料理家365名によるプロのレシピ4812

食のトレンド情報室「食ラボ」

気づけば2014年もあと少し。今年も食の話題には事欠かない、おいしいものがいっぱいの一年でした。そしていちばん盛り上がった食のトレンドはなんだったのか? 食の現場にいるプロたちが今年を振り返り、「2014年・食のトレンド総決算」を決定! (まとめ・文:北條芽以)


今回のメンバー

2014年 食のトレンド総決算

1位 塩レモン

今年、食の専門家がもっとも「流行った!」と実感したのが塩レモン。昨年、当サイトでも「2014年流行りそうなもの」として挙げており、そこから書籍などの企画にも発展している。塩とレモンという手に入りやすい材料から、さまざまな料理に使える調味料をかんたんに作れることからブームに発展したようだ。
「関連書籍もものすごくたくさん出て、たくさんあるからこそ書店でも"塩レモンコーナー"ができ、みなさんの目にとまったといえます。今年はフードコーディネーター業界でも仕事が多く、一大ブームでしたね」(森崎)

塩レモン


森崎繭香『塩レモンでつくるおうちイタリアン』(青春出版社)


2位 サードウェーブコーヒー

自家焙煎したコーヒーをいっぱいいっぱいドリップで淹れる、日本のスタイルが欧米で人気となり、それが逆輸入されてブームに着火。"パリでいちばんおいしいコーヒー"と謳われる表参道「クチューム」や、個人の自家焙煎コーヒーショップも続々開店。どこもおしゃれで、インテリアにも凝っているのが特徴だ。
「長野の『丸山珈琲』が、麻布や銀座にできた長野の物産館に出店したもの牽引力に。ばりすたという仕事がかっこいい仕事になりました。『ビルズ』も来年はコーヒーを展開するようですし、まだまだブームはつづきそう」(下井)
「国内外でコーヒーの淹れ方がYouTube上で人気を博すなど、ブームは世界的」(沢田)

2位 サードウェーブコーヒー


「Single Origin Roasters」billsオリジナルコーヒー


3位 ココナッツオイル

アルツハイマー病をはじめ、酸化しにくく、そのまま髪や皮膚に塗って美容のために使う人など、健康・美容を重視する人々の間で一大ブームに。揚げ物で何度でも使えるなど、やや価格が高いとはいえ使い出したらリピートする人が多かったようだ。 「普通のスーパーでも売られるようになったし、夏を過ぎたくらいから本格的にブームを実感。ヘルシー系のカフェではココナッツオイルを使ったお菓子なども増えました。まわりには美容やオイルプリングに使う人も多かったです」(森崎)


ココナッツオイル


荻野 みどり『ココナッツオイル生活をはじめよう』(講談社)


4位 作りおき

書店のレシピコーナーで旋風を巻き起こしたのが"作りおきレシピ"。これまでもあった食文化だが、多忙な人が週末に作っておいてウィークデーに手早く出すなど、現代のライフスタイルに合ったブーム。第1回料理レシピ本大賞に輝いた「常備菜」(飛田和緒著/主婦と生活社)や「作りおきサラダ(主婦の友社)などが大人気に。
「いままでにもあった食文化ではあるが"作りおき"という言葉の強さが現代の食事スタイルにマッチ」(沢田)



飛田和緒『常備菜』(主婦と生活社)




『作りおきサラダ』(主婦の友社)


5位 アイスバー

夏のブームといえばアイスバー。かき氷も昨年同様に行列ができたが、新顔としてアイスバーが人気となった。アイスバー専門店「パレタス」の1号店が鎌倉にオープンしたのは2013年8月だが、その年の夏はメディアにはあまり登場しなかったため、2014年のブレイクになったようだ。その後、吉祥寺店、横浜店をオープンし、期間限定出店も多く、レシピ本も発売。また、同じ鎌倉の「イグル氷菓」も話題に。
「フルーツの断面を見せる美しさや、素材を厳選した高品質なアイスバーはこれまでなかったもの。かわいくて人に言いたくなる、差し上げたくなるアイテムという意味でも人気には頷けます」(下井)

5位 アイスバー


パレタス アイスバー


6位 メイソンジャー

アメリカBall社が製造する保存容器が大ブレイク。瓶の中に野菜を重ね入れてサラダにし、ホームパーティに持ち寄るなどの使い方が、下半期の話題に。特にホームパーティの多いママ世代に人気となった。食雑誌だけでなく、女性誌でもおしゃれアイテムとして取り上げられることが多い。
「見た目のかわいさ、さっとサラダを仕上げたときの盛り上がり。現在の感触ですと、これからまだまだ書籍が出るのではないでしょうか」(森崎)
「ママ友の家で実際に大流行しています。出来栄えがかわいいのでSNSでシェアしたくなるのも人気に火がついた理由かもしれません」(下井)

6位 メイソンジャー


隈部美千代『MASON JAR BOOK』(エムオン・エンタテインメント)


7位 朝食

当然、これまでも食べられてきた朝食が今年あらためて人気に。そもそもパンケーキやエッグベネディクトが人気で朝食カフェやレストランが人気のなか、SNSのインスタグラムで話題となった「TODAY'S BREAKFAST」(山崎佳著/主婦の友社)が家で楽しむ朝食の価値を上げた。また、外食では千駄ヶ谷には世界の朝食を食べられる「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」がオープンし話題に。
「上半期は『GRAND HYATT TOKYO とっておきの朝食レシピ』(グランド ハイアット 東京著 ダヴィッド・ブラン監修/パルコ)が売れましたし、外食・内食ともに朝食にスポットライトが当たりました」(下井)

7位 朝食


山崎佳『TODAY'S BREAKFAST』(主婦の友社)


8位 アサイー、スーパーフード

体にいい成分を多く含む"スーパーフード"は世界中のヘルシー嗜好の人々が愛用する食材。3位のココナッツオイルもそのひとつだ。キヌア、カカオ、チアシード、マキベリーなどさまざまなスーパーフードが席巻したが、特に人気となったのがアサイー。ポリフェノールや鉄、食物繊維などが豊富で、「アサイーボウル」として習慣的に朝食としている人も多い。スーパーフードはまだまだ流通していないものも多く、これからも注目したい。
「コンビニやスーパーでもアサイーボウルが買えるようになったのは今年。定着といっていいかもしれません」(沢田)
「カフェでも手軽に食べられるようになり、消費のすそのが広がりました」(森崎)

8位 アサイー、スーパーフード


写真提供:フルッタフルッタ


9位 ウイスキー

NHK連続テレビ小説「マッサン」によってウイスキー人気が過熱。雑誌などでも特集が組まれ、こぞってウイスキーの魅力を再認識。また、これまでウイスキー=男性の飲み物というイメージが強かったが、「ウイスキー女子」なる言葉も誕生。ウイスキーにチョコレートやスイーツを合わせたり、ウイスキーカクテルも人気となっている。
「女性向けのウイスキーの楽しみ方には今後も注目。ウイスキーを楽しむために燻製の風味を使ったスイーツなどを提案しています」(森崎)
「『マッサン』の影響で、パティスリーでもウイスキーを使ったお菓子が増えています」(下井)

9位 ウイスキー


竹鶴ピュアモルト生チョコレート


10位 おにぎらず

おにぎりのように"おぎらず"、ごはんに具をサンドするスタイルが特にママたちやお弁当を作る層で人気に。のりで包んでからサンドイッチのように半分に切り、断面を見せられるため、見た目もかわいらしく、やはりSNSで広く広まった。特に「クックパッド」ではたくさんの おにぎらずが登場し、ユーザーが個性的な組み合わせを披露している。
「漫画『クッキングパパ』(うえやまとち作/講談社)から誕生した言葉。ランチパックのように食べやすいスタイルも人気の秘密でしょう」(沢田)
「数年前に一度流行りかけたのですが、2014年になってここまで広まったのはSNSのおかげでしょうか。断面を見せられるのが魅力です」(森崎)

10位 おにぎらず


「金の◯◯」シリーズ、かき氷、ハワイ、フレンチトースト、Bean to Bar、アーモンドミルク

Bean to Bar


・「内食で気軽な食事を楽しむ層ではセブン&アイの 『金の◯◯』シリーズが大ブレイク。『金のパン』を皮切りに、『金のカレー』『金のハンバーグ』などは売り切れが続出しました。手軽に買えて、手間はほとんどかからず、しかもヘタすると外食で食べるよりおいしいという完成度の高さが勝因」(沢田)

・「昨年に引き続き、猛暑の影響もあってかき氷に行列が! 天然氷の使用はもはや定番で、シロップとしてドンペリなどのお酒や、いい素材を使った手作りシロップをかけるお店が人気に。もはや大人のひんやりスイーツといえます。天然氷以外では、韓国や台湾など海外のかき氷文化も上陸しました」(下井)

・「イメージがわきやすく、のんびり上質な時間を楽しむ印象のハワイ。アサイーボウル、エッグベネディクトなどハワイからたくさんのアイテムが入ってきました。これからもハワイというキーワードは注目です」(沢田)

・「ポストパンケーキとしてフレンチトーストに注目するカフェが続出。以前流行した、バゲットを使う『パンペルデュ』とは違い、食パンやブリオッシュを使って"ふわふわ""トロトロ"な質感が2014年のフレンチトーストの特徴です」(下井)

・「2013年に始まったショコラティエ業界のBean to Barブームが本格化。ジャン=ポール・エヴァンがパリの北マレ地区に専門店を出すなど、アメリカで誕生した文化にフランス人がのりはじめたのだから画期的です。『Toshi Yoroizuka』ではカカオの育成をはじめ、"Farm to Bar"を謳っています」(下井)

・「アメリカでは子供に飲ませる飲料として定番のアーモンドミルクが日本でも普及。コレステロールゼロで低カロリー、ヘルシー嗜好の人に人気があるようです。味にクセがあるため、大ブレイクには至りませんでしたが、スーパーなどでも気軽に買えるようになりました」(森崎)


まとめ

自分の豊かな時間のため、健康のために家でちょっと贅沢な料理をする傾向が多かった2013年。2014年もその傾向は続き、ほんのちょっとの"手仕事"をして、日常の料理に反映しやすい塩レモンが1位に。さらに、健康志向ならココナッツオイルやスーパーフードを使う傾向も強かった。また、ブームの火種としてSNSは無視できないもの。感度の高い主婦や食好きの層は、朝食、メイソンジャー、おにぎらずなどのブームをいち早く取り入れ、人気はますます広がるという動きが定着。このスピード感、2015年もますます食の話題は充実しそう!


メンバープロフィール

【顔写真】下井美奈子さん
下井 美奈子 さん
TV、雑誌登場多数のスィーツコーディネイター。パリ「Ritz Escoffier」で料理・菓子のディプロム取得する他、ル・コルドンブルー、ルノートル、フランス家庭菓子、イギリス家庭菓子など学ぶ。All About 洋菓子ガイド、おとりよせネット達人、日本紅茶協会ティーインストラクターなどで活動中。
【顔写真】森崎繭香さん
森崎 繭香 さん
大手クッキングスクール講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。
企業向けレシピ開発や雑誌へのレシピ提供、NHK料理番組出演、ラジオ出演などの他、料理イベントの監修や飲食店のメニュー提案など、フードコンサルタントとしても活動中。
【顔写真】沢田けんじさん
沢田 けんじ さん
料理教室ミルハウス主宰。
辻調理師専門学校で西洋料理班に助教授として勤務の後、 イタリアンカフェのシェフを経て、教え上手な料理研究家として活動中。 豊富な知識と失敗しないコツを伝える授業が好評。 フランスのレストランで働いた経験もある本格派の話好き。

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