フードソムリエ

トスカーナの州都フィレンツェに生まれ育ち、幼いころからトスカーナの家庭料理に親しんできたフィリッポさん。いつしかトスカーナ伝統料理研究家であるお父様の料理に興味を持つようになりました。その影響からトスカーナの小さな街を巡り、家々に伝わる料理とそこに込められた人々の思いを受け継いでいきます。この時に感じ、学んだことが、日本人である奥様との結婚の大切な架け橋にもなったとか。来日後は自身がトスカーナ料理を教える側になろうと、学生時代に学んだデザインの仕事をするかたわら、奥様と二人三脚で基盤づくりをはじめました。それから半年後、ＮＨＫ水戸放送局の料理番組に出演が決定。今では、トスカーナ伝統家庭料理を学ぶ教室、AmorosoKato「CLUB・ITALIA」を主宰しながら、イタリア文化・イタリア語の講師として大学や専門学校で教鞭をとり、学生が実際にトスカーナ料理を体験できるように調理実習を設けるなどの工夫をしています。また地元の大手スーパーと連携して月一回トスカーナ料理やお菓子を紹介、地元の音楽家と連携してイタリア音楽と料理とのコラボレーションベントなどにも挑戦しています。

トスカーナ料理をつくる際、フィリッポさんが愛用している道具をいくつかご紹介します。ふだんわたしたちが家庭で使っている一般的な調理道具と同じ用途でも、鉄・木・土などの素材や色形はさまざま。どれも個性的です。

「メストロ」は、オリーブの木でつくられた柄の長い柄杓。「ペントラ」は、煮込み料理に欠かせない土鍋。「パッサトゥット」は、万能裏ごし器。「メッザルーナ」は、トスカーナ料理のベースとなる野菜を刻む際に必要な道具。どちらもイタリアの家庭に必ずひとつはある道具。（写真上から左回りに）

「料理には、その国の文化が大きく関係しています。長年トスカーナに伝わる料理を調査研究してきてわかったことは、短期間で学べる料理はひとつもないということと、それを教えることはさらに難しいということです」。だからこそ料理を学ぶ際には、その料理が生まれた国の文化も一緒に学んでほしい、とフィリッポさん。「料理にはテクニックよりも大切なことがあります。同時に料理は『つくること、食べること』を心から楽しむことが大切。「心」を伝えていけるように、これからも活動を続けたいと思っています」。