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東京農業大学 ”麦” フォーラム

11月21日、素敵な勉強会に参加しました。
我が母校、東京農業大学(オホーツク網走キャンパス)での”麦”を題材にした研究発表会に呼んでいただきました。といっても、私は世田谷キャンパスのほうで、実は初めて網走キャンパスにいったのですが・・・。

 以前にオホーツクキャンパスの教授から電話をいただき、4年生徒たちの”麦”に関する発表会があるのできてもらえないかとオファーをもらいました。行ってみると、これまたオホーツク海を眺望できる丘の上にたつ立派なキャンパスがあるじゃないですか!北の農大スピリッツはここでも育っているですね。

オホーツク(網走、北見を含む)地域は、小麦、馬鈴薯、甜菜(ビート)の生産の盛んなところで、積算気温や収量性の関係などで、豆の作付は増えていないようです。小麦も秋まきと春まき小麦が分散されて作付してある感じ。輪作体系からも、春小麦を導入している経緯があるようでした。

 さて、生徒たちは教職課程の面々で、将来は先生の卵になっていく様子。それぞれ、3~5人くらいのチームに分かれてテーマ別に発表をしていました。以下発表テーマ
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根本的なことですけど、麦はイネ科です。だから、ヒエなんかのイネ科雑草には、生育初期の除草剤しか効かせられません。発表では、小麦と大麦の違いを説明、小麦は寒さに強く(北海道向け)、粘りがある。大麦は厚さにつよい(本州向け)、水吸収率が高いとのことでした。
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このチームは、小麦の栽培について。播き方の違いや収穫期の子実水分の状況や熟期の違いを中心に、貯蔵段階での小麦の薫蒸作業があることも説明。これが、収穫後の貯蔵や輸送の病害中を防ぐ”ポストハーベスト”(収穫後に散布される農薬:作業は尋常なない風景)。しかしながら、9割を輸入にたよる日本の食糧安保には必要な工程なんでしょう。
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次のチームは、大麦について。知らなかったけど佐賀県もがんばってるんですね。押し麦とかにつかうんだろうか?網走は北海道の78%の生産量があってだんとつ。ほぼ春まきの二条大麦のみで、大手や地ビールになっているようでした。
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こちらのチームは、小麦の栄養成分について発表。特にタンパク質に注目して、アミノ酸組成に分けて研究。その中でも、甘味成分のグルタミン酸がタンパク含量や製粉の仕方によっても違うだんね、へ~。加えて、リジン(抗体・ホルモン・酵素の合成)、ブドウ糖代謝、肝機能増強)を多く含む卵や魚介類といっしょにたべることにより、地元の産業を活性化できるじゃないかと提案していました。ちゃんと地元用品を機能的にアピールするところ、郷土愛が育っている感じに聞こえました。
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このチームも地産地消を目指すための試みに、パン用小麦の作付増加、道内外に加工商品でのアピール、給食利用促進などまずは、海外麦→国内麦、道内消費31%→50%、麦のアピール”麦チャン”運動の促進とこういうバックアップ提案者が若い人にいるのは、農家にとっても貴重です。
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それから、小麦の副産物の”ふすま”やバイオ燃料への利用促進。なんでも、耕地面積あたりのエタノール収量は甜菜やサトウキビと比べると低いが、原料あたりのエタノール収量はは高く、水分が低く貯蔵性に優れる、セルロース成分が低いので燃料交換率が高いということ、麦わら利用も考えられるが、セルロース成分がたかいため、技術力向上が必要とのことでした。
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残り2チームは麦の流通について発表。やっぱり北海道は54万tと2位の福岡県(6.7万t)の生産量がある一方で、全体では国内消費量と生産量ではわずか18%しか供給できていない現実があること。国内と国外の小麦の流通はアメリカ、カナダ、オーストラリアの海外麦に大きく輸入を頼っているとのこと。私の予想ではここに将来ロシア産が参戦すると思う。

いずれにしても、各チーム素晴らしい発表でした。私も学生時代に”これだけ勉強しとったらの~”と今更次郎的な反省をしながら、しかし、小麦の栽培や農家収入(助成金)のしくみや大掛かりな生産工程や国の検査体制は現場にたってる者じゃないとわからない、数字にでてこない裏側があると説明させてもらいました。同じく、同大学卒業の幕別町で製麺業と営む”小田壱”さんの小田さんも加工業者としての苦悩や道産小麦への要望・期待を学生に伝えていました。

最後には、井上教授から”第六次産業”という新しい言葉の説明をうけました。
なんでも、農学博士の今村奈良臣が提唱した新語になるようですが、要は農業のような一次産業の生産だけでなく加工・流通・販売等も統合的に取り扱うことで,事業の付加価値を高める経営形態。

第一次産業(生産)を1とし、,第二次産業(加工)が2,第三次産業(流通・販売等)の3を掛けた1*2*3=6になるということのよう。

そうですよね~、農業はまだ1の根っこの部分。その1が0になったら、2,3次も消滅、経済活動はなくなるんです。1を産みだす畑や牛がいること事態、強みをもってるんだなと思いました。

今回のフォーラム、学生よりも私?の勉強になりました~。
どうもありがとうございました。

学生の皆さん、農業もいいもんですよ、だってまだ1からスタートできるんですから!!


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コメント (1)

弘照:


 第六次産業を目指すために、調査、研究を着実に行い、基礎固めをしている様子がわかりますね。

 このような高所から農業経営をどのようにして進展するべきかを研究する分野と実際の農業を経営している農家が抱えている問題との両面から研究して、新しい経営の姿を見つけられればよいですね。

 ただ、今回の発表は、研究というより調査、分類といった報道機関が書くような内容であり、今後、深みのある研究、分析などを行う必要がありそうです。
明日の農業経営のあるべき姿を求め、大地に足をつけた真の研究が望まれます。

チョット、シビアなコメントでスイマセン!!

                        弘照

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プロフィール


前田 茂雄(まえだ しげお)

【プロフィール】
1974年 北海道・本別町生まれ。
東京農業大学 卒業後、テキサスA&M州立大学、アイオワ州立大学にて米国の大規模農業経営や流通を学ぶ。
1999年 前田農産食品合資会社の4代目として本別町で就農。
103ヘクタールの耕作地で、小麦(ホクシン、北の香り、春よ恋)小豆(エリモショウズ、キタノオトメ)、甜菜を生産。

三児のパパ。
趣味:テニス、映画鑑賞、旅行。
(写真提供:日本農業新聞)

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2009年11月22日 14:19に投稿されたエントリーのページです。

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