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食のプロSTORY
VOL.1-2<後編>チーズ職人・白糠酪恵舎 井ノ口和良氏

前編では、チーズ職人としての目指すべき方向性を
「深化(しんか)」と語ってくれた井ノ口氏、

では、井ノ口氏の考える深化とは一体何でしょうか?


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それは一言でいえば「究極のバランス」であると井ノ口氏は語ります。

チーズは、
温度、タイミング、塩加減ひとつで変わる微妙なミクロの世界。

カーリョ(凝固のための酵素)を入れるタイミングひとつ、
乳酸菌の温度管理ひとつ、
PH(ぺーハー)の管理ひとつ、
カードカットひとつ・・・。

そして、モッツァレッラの命でもある
フィラトゥーラ(縦に繊維を作っていく作業)に、
サッセッタ(モッツァレッラが使っている水)の加減。

こんなに複雑な行程を経て、
緻密に計算されてチーズが作られているのかと驚いてしまいます。


カード

card3.jpg

上記にお湯を入れてフィラトゥーラする

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モッツァレッラが出来上がっていく

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■安易な商品は、あきられる、目先を変えてもだめだ


深化するチーズと聞くと、

新タイプのチーズへのチャレンジや、
スモークをかけたり、ハーブを混ぜたり、地元の農産物を入れたりなど
目先を変えることを考えがち。


しかし、井ノ口氏が求める深化は、

チーズそのもののポテンシャリティをあげること」であり、
技術水準をあげていくこと」にあります。


また、私たちはややもすると、いつでも同じチーズが食べられるのが当たり前と思ってしまいます。

しかし、気温や湿度の変化、
牛の状況なども相まって、原料となる乳の状態は、常に一定ではありません。

ushi.jpg


その不安定な状態の中、
細い針の穴に糸を通すように、
井ノ口氏は、自分のチーズを研ぎ澄ますことに余念がありません。

それは、職人としての誇りであり、
チーズを買ってくれるお客様への感謝の気持ちの表れではなのです。

■この土地のチーズへ

チーズ深化は、
井ノ口氏が職人として、また自己の思いだけで
進めているわけではありません。

酪恵舎では、イベントやモニタリングなども積極的に行われており、
常に地元消費者との接点を持ち続けています。


先日、2年間にわたり、実行委員長を務めた「釧路・愛食フェア」の
2007年のフィナーレを飾る「愛食テーブルIN 釧路」が開催されました。

ここでは、地元生産者の食材を、地元のシェフが料理し、
生産者が自らサービスをするという従来にはない新しい試みが行われました。

menu.gif


ランチ4回、ディナー2回で、
合計150名を超える消費者が食事を楽しみながら生産者との交流を深めました。

もちろん♪井ノ口氏も料理をサーブしながら

「いかがですか?」
「この料理の組み合わせはどう思いますか?」

と、料理と一緒に素材への愛情も運びつつ、
ユーザーニーズの汲み取りにも余念がありません。


■酪恵舎のロビオーラを使ったアイスクリーム

sweets.jpg


こういった日々の積み重ねの中、

チーズ職人・井ノ口和良氏と、
白糠酪恵舎が作るチーズは、

いよいよこの土地の風土、ユーザーニーズにあった

「白糠町のチーズ」になろうと根付き始めているのです。

今後ますます活躍が期待される酪恵舎のチーズ、
あなたもご一緒に深化を見守ってください。

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コメント (2)

toma:

愛食テーブルは169人もの人が来たとこと。本当によかったですね。この時のディナーででたロビオーラのアイスクリームはウォッシュチーズがデザートになるという不思議を体験しました。その話を札幌のフレンチにシェフにしたら、アイスクリームにトマトピューレとオリーブオイルをかけてアイスの上にタレッジョを小さく切った奴を二かけくらい乗せたものを出してくれました。これはこれで美味しいかった。
 フレンチってのは何でもありなのだと思いました。

年賀状をどうも有り難う。9月から12月目でにイタリアへ行きました。久しぶりの旅だったので、ちょっとイタリア語を忘れたよう。「どこの国からきましたかと聞かれたこともありました!」よっぽど私のイタリア語は変に聞こえたでしょう。また一月からおいしいチ-ズを送ってくれると首を長くして待っています。(小路谷先生の伝言です)。
中標津にいらっしゃる機械があればよって下さい。

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プロフィール


北村 貴(taka)
フードソムリエ代表


20年間の東京生活を経て、
2004年12月、真冬に
故郷・北海道十勝へ戻る。
よく食べ、よく遊び、よくしゃべる。
特技は四葉のクローバー探し

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2007年9月19日 16:09に投稿されたエントリーのページです。

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