上野万梨子さん写真

料理家・上野万梨子さん

東京生まれ。77年から90年まで、東京・玉川田園調布の実家にてフランス料理教室「La Nouvelle Image」を主宰。91年パリに移住し、現在もパリを拠点に書籍・雑誌への執筆、イベントの企画編集、商品開発のコンサルティングなど、食の分野で幅広く活躍中。主な著書に『小さなフランス料理の本』(NHK出版)、『上野万梨子のパリの小さなキッチンから』(大和書房)、『上野万梨子の1,2,3レシピ』(講談社)がある。
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ポワッソヌリー・デュ・バックという魚屋

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左岸のデパート、ル・ボン・マルシェ脇を通るバック通りを歩いて信号二つ目、その少し先右側にあるのが、ポワッソヌリー・デュ・バックという魚屋さん。パリでは珍しく、生きのよさも清潔感も上等な、私の行きつけです。切り身販売や、小さめの魚のパック詰め販売が多い日本に比べて、写真でご覧のようにフランスの魚屋さんのプレゼンテーションはいかにも立体的です。

フランスの商店では「売り物をどう美しく飾って見せるか」が重要で、それは食料品についても同じこと。裏通りのひなびた店でも精一杯の飾り付けをしているのを見ると、店主の思いが伝わるのでしょう、ちょっとあか抜けない飾り付けだなと思っても、ただ通り過ぎずに、ウィンドーをのぞいてみようという気持ちになるものです。

さて、この魚屋さん、プレゼンテーションの技はなかなかのものです。ご覧のように左下にほんのちょっと見えている舌平目のプチ・バトー(4枚におろした身のことを“舌平目の小舟”と呼びます。これは舌平目だけの呼称で、他の魚には使われません)と、右に見えるカエルのもも肉の串刺し以外は、すべて丸ごとの販売。スズキの一本釣り、赤鯛の一本釣り、大西洋のシャポン(ブイヤベースには欠かせない鬼カサゴの別名)、的鯛、ラングスティーヌ(手長海老)……。堂々とした品揃えです。

この店のすごいところは、店内にある「瞬間蒸し器」を使い、客が選んだオマール海老やカニ、スズキなどの魚を丸ごと蒸してくれることです。ある日のお客は、一本釣りのスズキをご注文。店員は客の目の前でスズキを下処理し、乾燥フェンネルと塩、赤胡椒を散らして一気に蒸し上げます。家に持って帰ったら、あとは塩の華を散らし、オリーブオイルをまわしかけるだけ。この店のご近所さんはなんと幸運なことでしょう。パリに行くことがあったら、ぜひ一度立ち寄ってみて下さい。では、ちょっと気が早いけれど……ボン・ボワヤージュ!

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